この記事の概要

・2023年最新の空き家率の全国平均は13.8%となり、空き家の総戸数は約900万戸となった。
・このうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(以下、その他空き家)率は5.9%となり、385戸となった。
・空き家数はこの30年間で約2倍となり、その他空き家は2.58倍となり、放置される空き家の増加傾向が窺われる。
・空き家率が高い地域は地方圏に集中するが、空き家数が多い地域は都市圏に集中しているパラドックスがある。

全国の空き家数と空き家率の推移

令和6年4月30日に総務省より公表された「令和5年住宅・土地統計調査」の速報によると、2023年時点における空き家数は900万戸と過去最高となり、前回調査の2018年より51万戸の増加(6.0%増)となっている。ここ30年間で見ると、1993年の448万戸から倍増しており、空き家問題の深刻さが窺われます。
特に、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(その他空き家)は385万戸となり、前回調査の2018年より36万戸増加(10.5%増)となっており、30年前の1993年の149万戸より2.58倍と利活用がなされない空き家の増加はより深刻な状況となっています。

住宅の総ストックに占める空き家率は13.8%、その他空き家率は5.9%となりいずれも過去最高となっています。

ここで空き家の定義を再確認しておきましょう。

カテゴリー1

賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家

(その他空き家)

賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など

(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)

カテゴリー2

賃貸用の空き家

新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
カテゴリー3

売却用の空き家

新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
カテゴリー4

二次的住宅

別荘:週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅

その他:ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅

以上のように、世間的なイメージとしての「空き家」は、今後利活用の見込みがないカテゴリー1であるその他空き家が該当するため、以下では、全体の空き家数・空き家率と、その他空き家数・空き家率に分けてデータを見ていくことにしましょう。

都道府県別 空き家率

以上の状況は、全国平均の状況のため、エリア別に見るとどのようになっているか都道府県別のデータを紐解いていきましょう。
まずは、全国の都道府県の空き家率とその他空き家率についてマッピングをしてみました。

Web
Web

空き家率が高い地域としては、中部エリアや四国エリア、九州の南部エリアに集中しており、概ね西日本に空き家率の高い地域が集中しています。

空き家率とその他空き家率について、高い都道府県と低い都道府県のトップテンをデータ加工したものが次の通りです。

【空き家率 低いエリアの傾向】

空き家率の低いエリアの傾向としては、東京と中心とする首都圏エリアや沖縄や福岡のような人口増加エリアに加え大阪や宮城のような人口が多い都市が多い印象です。東京については、全体の空き家率では4位ですが、その他空き家率が1位となっております。これは、東京においては、売却や賃貸などの待機用の空き家が多いため、このような傾向となったものとみられます。やはり、その他空き家率のほうが、未利用の空き家のイメージに近いデータとなっているように思われます。

【空き家率 高いエリアの傾向】

空き家率の高いエリアの傾向としては、四国や九州南部エリアに集中しており、その他和歌山など近畿南部エリアの空き家率も突出しています。特に、未利用の空き家と目されるその他空き家の空き家率を見ると、太平洋沿岸の西日本エリアに集中している状況となっています。

都道府県別 空き家数

以上のデータは空き家率でしたが、空き家の総数を次に見てみましょう。
同じように日本地図を都道府県別に空き家数及びその他空き家数についてそれぞれマッピングしたものは次の通りです。

Web
Web

空き家率と打って変わり、空き家数の総数が集中しているのは、大都市圏となっています。大都市圏はそもそもで住宅のストック数も多いことから、空き家率が低くとも空き家数が多くなる傾向がデータからも読み取れます。

空き家数とその他空き家数について、高い都道府県と低い都道府県のトップテンをデータ加工したものが次の通りです。

【空き家数 少ないエリアの傾向】

空き家数の少ないエリアの傾向としては、そもそも住宅ストックが少ない県が上位を占めています。例えば、その他空き家数が最も高い鳥取県は、その他空き家の戸数が約26,000戸であり、上位の大阪の約10分の1の戸数となっています。なお、鳥取県のその他空き家率は9.7%と全国平均の5.9%を大幅に上回り、ワースト11位となっています。2位の佐賀県もその他空き家数は約28,000戸ですが、その他空き家率でみると7.7%と比較的高い空き家率となっています。このように空き家率が高いからといって空き家の総数が多いとは限らないことに注意が必要です。
ただ、低いエリアの中で一つだけ特徴的な県があります。それは、沖縄県です。沖縄県のその他空き家戸数は、約28,000戸でありますが、その他空き家率も4.0%と空き家率が低い県です。沖縄県は、人口増加が続いており、空き家率、空き家数とも低い特異な県と言えるでしょう。

【空き家数 多いエリアの傾向】

空き家数の多いエリアは、人口や住宅ストックの総量の多い大都市圏に集中しています。その他空き家率でみると、東京都は空き家率が最も低いものの、その他空き家の総数では、全国2位と約215,000戸となっております。その他空き家数が最も多いのは大阪府であり、東京より大阪のほうが空き家総数で見れば空き家問題は深刻です。このように、その他空き家の総量が集中するのは、意外に空き家率の低い都市部に集中しているというパラドックスを見逃してはならないと考えます。
一方で、空き家総数のトップテンとなった鹿児島県は、その他空き家率が全国1位(13.6%)となっており、割合的にも総量的にも深刻な空き家問題を抱えている状況となっています。

このように見ると空き家問題は、質的問題と量的問題の2つの側面があり、地方圏だけの問題でないことがよく理解いただけたかと思います。

特に、都市部は住宅密集地域が多く、近隣への外部不経済の影響度は地方圏より深刻であることが想像できます。空き家特別措置法の対象となるような空き家は都市部に多く存在し、これから高齢化が進む中、都市部における空き家問題のほうがより深刻であると言えるかもしれません。